令和7年 皐月

 「よきひとのおおせをかぶりて信ずるほかに別の子細なきなり」
歎異抄の一節です。念仏の教えに疑いを持ち、信じきれず、確信を得たい思いから関東より京都まで遠路を訪ね来た人々を前に親鸞がのべられた言葉である。
 親鸞にとって師とあおぎ尊敬し、信頼する法然上人のおっしゃることを信じる以外に他に何もありません。親鸞にとって信じるものは法然上人なのです。私たちも生まれ成長し、そして年を重ね人生を終えるまでに多くの人々との出遇いがあります。まず親との出遇いに始まり家族・友・師・愛する人・子孫・そして仕事もそのひとつかも知れません。それらの出遇いはそれぞれの人々の生き方に大きな影響を与えます。人は出遇い通して成長していくのかも知れません。
 多くの出遇いの中で自分自身の人生の方向性を決定づけるような大切な出遇いがあります。親鸞はよきひと法然上人との出遇いによって迷いのない人生を生き抜かれたのだと思います。
すべての人々がよきひととの出遇いによってすばらしい人生を歩まれますことを願ってやみません。

5月

  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

令和7年 卯月

 2025年3月6日放送のカンブリア宮殿は「魔法のタオル」と呼ばれ、吸水性・速乾性に優れ累計1900万枚を販売した独自のタオル開発で倒産の危機を乗り越えた浅野撚糸の熱血浅野社長を取り上げていました。
 震災から11年間人口0、かつては7000人が暮らしていた「福島第一原発の町」双葉町。2022年には一部の避難指示が解除され500人が帰還すると見込まれていました。福島で大学生活を送ったという縁もあり、浅野さんは双葉町の復興を願い2023年に30億円を投じて新工場を開業しました。しかし、実際戻ってきたのは高齢者が30人ほど…。「雇用創出」が一番の目的だった浅野さんにとっては大きなショックでした。岐阜の本社工場より移動してきた数少ない社員だけの広い工場は閑散としていました。新工場建設で抱えた借金が重くのしかかり、浅野さんは再び倒産の危機に追い込まれていました。
 そんな時、苦境のどん底にあった浅野さんの気持ちを大きく変える出来事が起こりました。 それは福島県内の高校生達が新入社員の話を聞きに来た時の事です。対応したのはその年に入社した女性社員でした。ある男子生徒から「復興とは、あなたにとって何ですか?」との質問でした。彼女は「私は高校を卒業するまで復興の役に立つことが何も出来ませんでした。この会社に入ることで復興の役に立つと思いました。私にとって『復興とは私がここにいる事』です」と答えました。その言葉を聞いた浅野さんは涙をおさえる事が出来ませんでした。裏にまわり泣きました。諦めかけていた自分を恥じました。
 スイッチが入った残野さんは、今まで営業してこなかった大手小売チェーン店などに営業をかけ、同時に売り上げ回復の為、新たな撚糸を開発、双葉町視察の研修ツアー客を工場に呼び込むことにも成功、今では多い月には1000人以上が訪れるようになりました。今年は新卒5名の入社も決まっています。
 ひとりの女子社員の覚悟ある言葉が浅野さんをそして会社をどん底から救ったのです。

4月

  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

令和7年 弥生

 今、人々の注目を集めているAI(人工知能)は近い将来、私たちの日常生活のあらゆる領域に大きな影響を与えるのでしょう。もちろん宗教もその例外ではありません。
 「誰もが避けることのできない大切な人との別れ」をより良いかたちでお別れできるようお手伝いする。それはお寺の重要な活動のひとつです。そして、ひとりひとりご自身の人生のおくり方、自生の終り方をお釈迦様の教え、親鸞聖人の生き方を通して一緒に学んだり考えたりすることだと考えています。
 心を持つとも言われるAI(人工知能)ChatGPTは人間との対話に近い自然な文章(言葉)を生成します。VR技術を活用して生み出される仮想空間は、今ある現実とは別の新たな「現実」の中に亡き人を蘇らせることを可能にします。これらの技術は生と死の境目を曖昧にするのかもしれません。
 私たちには受け入れ難い別れがあります。その時これらのテクノロジーが私たちを救うのか、いや受け入れ難い現実をありのままそのまま受け入れる(諦観)ことにより人生を前に進めることができるのか…。対立するのではなく両者が足らない部分をおぎない合い人々の豊かな生活に貢献できればいいですね。

3月

  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

令和7年 如月

 第二次世界大戦の終戦後、世界は悲惨な状況の下、平和な世界への構築にむけて協調し歩み続けてきたように思います。しかし今日、大国の偏った自国主義、覇権主義は協調から対立・分断、そして戦争へと進もうとしています。私たち人間の持つ自己中心性の暴走は他者への攻撃そして破壊へと向かわせます。
 私たちには智慧があるはずです。自分がされていやな事は他にしない。自分がされてうれしい事は他にもする。私たちが希求し目指す世界はすべての国々のすべての人々が平和で安心して生きていける世界のはずです。
 私たちひとりひとりも自己中心性の中にある事を決して忘れてはいけません。「他に対してはいつも裁判官になり、自分に対してはいつも弁護士になる」それはとても恥ずかしいことです。「批判は小さく賞賛は大きく、他には優しく自己には厳しく」。
 常に自己に厳しく向きあい困難な時代を人々と共に生きぬいた親鸞聖人に学ばせていただきたいものです。

2月

  
  
  
  
  
  
  
  
  

令和7年 睦月

あけましておめでとうございます

 世界一の野球選手を迎えドジャースは大変な盛り上がりを見せていました。2024年3月20日開幕戦に勝利し興奮冷めやらぬ中、あの事件は起こりました。大谷選手が渡米して以来ずっと二人三脚で公私にわたり信頼してきた通訳一平氏の裏切りが発覚したのです。何が何だか分からない混乱の日々は続きました。まだ新しいチームになじめないそんな中、チームメイトのフリーマン選手(自身10才の時母を亡くした)は「人生苦しい時が誰にでもある。その時支えてくれる人がいれば、その人に僕がなる」と大谷選手に伝え、寄り添い続けました。
 そのフリーマン選手もシーズン途中に息子が難病を発生し、チームを離れました。その時、大谷選手をはじめチームメイト全員が一丸となって彼の家族に寄り添いました。

 新年がすべての人々にとって互いに支え、そして支えられ、感謝し合えるすばらしい一年でありますように
                               南無阿弥陀仏

1月